こんにちは!
HIMA-JIN WALKER です
座席ゲームの王者たち
朝のラッシュアワー、電車の中はサバイバル。
どこかで空席が生まれた瞬間、誰が王座に君臨するかの静かな戦いが始まる。
スマホを見つめているかのような目線の隅で、乗客たちは互いの距離感を計算する。
「あの座席まで2秒で到達できるか?」
「向かいの学生は腰を浮かせる兆しがあるか?」
すべてが綿密な判断材料だ。
誰にも気取られない瞬発力が勝負の鍵だが、時に手負いの戦士も現れる。
杖を突いた老人を押しのけて座ったサラリーマンは、人生に何を背負っているのか?
ここでは誰もが勝者になりたいが、勝者になるたびに一つずつ、どこかで「何か」を失っていくようにも見える。
今日も席を奪い合い、誰もが英雄であり、滑稽な敗者でもある。
イヤホンから漏れる宇宙
車両の中で、微かに漏れ聞こえる音楽たち。
R&B、J-POP、インディーズロック、果ては演歌。
乗客はお互いを見ないふりをしながら、無意識のうちに他人の趣味を知ってしまう。
「この人は失恋中だろうか?」
「あのサラリーマン、こんなに激しい曲を?」
漏れ出た音楽は、人の内面がつい漏らした小さな叫びかもしれない。
それはまるで窓越しに宇宙を覗くような体験だ。
お互いのイヤホンから流れる音楽が、どこかで響き合っているとしたら?
すれ違いながら重なるメロディーは、一瞬の出会いと別れを象徴しているようにも思える。
電車という名の狭い宇宙で、私たちの誰もが見えないオーケストラの一部だ。
吊り革は意志の象徴
吊り革に掴まる人間たちの姿勢は、それぞれの人生観を映し出す。
しがみつくように両手で掴む人は、不安に怯える生存者かもしれない。
片手で軽く握りながらスマホを弄る人は、余裕を装った日常の名人。
全く掴まずバランスを取る者は、スリルと自由を愛する変わり者。
吊り革がずらりと並ぶ車両内は、無数の価値観と選択肢の展示場だ。
思い通りにいかない人生の象徴であるかのように、掴もうとしても吊り革は微妙に揺れる。
けれど、それでも掴まることを諦めないのが私たち。
「今日も揺れながら進んでいくしかない」と吊り革がそっと教えてくれる気がする。